これまで、デジタルフィルタの構成イメージを掴むため実際にPythonで実装してみた。
けど、本格的にフィルタを構築する場合、しっかりとした設計が必要になる。
ということで、今日はデジタルフィルタの設計について。
まず、大まかな設計の流れについて。
信号からある特定の周波数成分だけ抽出(あるいは除去)したいというニーズがあるとして、デジタルフィルタを設計するときは以下の6ステップを踏む必要がある。
(1)抽出したい成分の周波数を特定する
目的とする信号とノイズを区別するため。
(2)目的に合わせてフィルタの種類(ローパス、ハイパス、バンドパスetc)を選択する
高周波のノイズ除去ならローパス、FMラジオの電波受信みたいに特定の狭い周波数帯域だけ欲しい場合はバンドパス、など。
(3)選択したフィルタをアナログフィルタで実現した場合の伝達関数を求める
この段階で得られた数式はs領域のもの。
(4)(3)で求めた伝達関数をデジタルフィルタの伝達関数に変換
s-Z変換を用いて離散時間領域のシステムに変換する。
(5)(4)で得た伝達関数から差分方程式を導出
伝達関数を式変形した後、z逆変換して導出。
(6)差分方程式を実際にコーディング
こんな感じ。
今までにやってきたフィルタの実装は(6)にあたる(設計がいかに大変な作業なのかがよく分かる…)。
練習がてら、上の6ステップに基づいて「信号から1000Hz以下の周波数だけ取り出すフィルタ」というものを1から設計してみる。
(1)周波数の特定
上の題目から、取り出したい信号成分は1000Hz以下のもの。それ以上はノイズであるという前提条件を立てる。
(2)フィルタの選択
「1000Hz以下の周波数だけ」とのことなので、ローパスフィルタを選択する。
(3)伝達関数導出
回路理論の教科書を引っ張り出してローパスフィルタのアナログ回路構成と回路方程式、そして伝達関数を調べてみる。
図下部の数式は、回路方程式を立てる→ラプラス変換→H(s)導出、という流れになっている。
これで伝達関数H(s)が手に入った。
(4)s-Z変換を行う。これにはいくつか方法があるんだけど今回は「インパルス不変法」を使ってみる。
インパルス不変法はその名の通り、アナログフィルタのインパルス応答の標本値を利用する変換方式。
詳細の説明はコチラにゆずるとして、変換の過程はこんな数式。
めでたく、デジタルフィルタの伝達関数Hd(z)が手に入った。
※ここではオーソドックスな方法である、という理由からインパルス不変法を使った。けど本当は、前に決定した部分を振り返りながら、慎重にs-Z変換手法を選択しなければいけない。各変換手法にはそれぞれ得手、不得手があるからだ。
今回はローパスフィルタを試しに実装しているけど、実はインパルス不変法ではハイパスフィルタやバンドパスフィルタは実現できない。
ということで、今回はサクっと設計手法を決めているけど、実際の設計では1ステップずつしっかりと進めていく必要がある。当たり前の話ではあるけれど、非常に重要かつ忘れがち…。
(5)差分方程式導出
差分方程式を求めるために、デジタルフィルタの伝達関数を式変形の後、z逆変換する。
…というと難しそうに聞こえるけど簡単で、ちょこちょこっと式変形を行うだけ。
最後に出てきた数式の中のvi(k)がFIRフィルタで実装する部分、vo(k-1)がIIRフィルタで実装する部分となる。
ここまで来たらあと少し。
いくつかの定数の値を決め、コーディングするのみ。
長くなってしまったので続きはまた今度。
※続きはコチラ
0 件のコメント:
コメントを投稿