2011年1月20日木曜日

「AR(拡張現実)で何が変わるのか?」とか「食える数学」とか

最近読んだ2冊の本がとても面白かったので感想などをポツリと。

「AR(拡張現実)で何が変わるのか?」



「東のエデン」とのコラボ作品などで有名なAR3兄弟によるARの解説本。
AR3兄弟自らが作った作品紹介をおりまぜつつ、「ARとは何か」、「ARで何が変わるのか」、「ARの未来は」といったことに関して言及していく。

すごく興味深かったのが「都市ガスはARなんじゃないか?」というお話。
ぱっと聞いただけでは何を言ってるんだかよくわからない。
いわく、本来無味無臭のガスに匂いを付加した都市ガスというのは、ガスの「性質」みたいなものを拡張している、という観点から考えると、AR(拡張現実)なんじゃないか、と。
他にも「風鈴」とか、変わったところだと「ディズニーランド」なんてものまでそういったARに含まれるんじゃないかと。

それまで持っていた「カメラ画像に合った画像をリアルタイムで表示させるための技術」といった狭い考えを覆し、ARの本質に触れられた(ような気がした)一冊でした。


「食える数学」



数学者とエンジニア、二つの職業を経験した著者が数学の実用性を身近な例を使って紹介していく、というもの。
紹介されているのはSuica、暗号、スパムフィルタリングなど、普段何気なく使っている技術。
これらの技術にどのように数学が応用されているかについて分かりやすく解説されている。
数式もほとんど出てこないし、文章も柔らかく、しかし表現が完結で短めなので、サクサク読めます。
「数学に興味はあるけどニガテ…」といった人でも難なく読み進められると思います。

だからといって理数系が得意な工学畑の人が読んでツマラナイかといったらそんなことは全然無い。
というかむしろ、工学畑の人が見るべきなのでは?とか思ったり。

著者さんは「武器としての数学」といったことを述べられています。
欧米に追い越せ、追い付けだった昔は目標、目的が明確に定まっていたが今はそうでは無い。
自分で目標を設定し、そこにたどり着くすべを自ら模索しなければならない、と。
そういった時に必要になってくるのが数学。

この「武器としての数学」を工業大学を出た自分がうまく使いこなせているのか、と自問してみると、かなりアヤシイ…。
あくまで「手段」と割りきってる節があり、証明をよく読まないこともしばしば。
こうなると本質を理解していないために、文字通り「付け焼刃」になってしまう…。

本の中では「数学は体育」とも述べられている。
食らいつかなければ身につかないと。
真に「自らの武器」とすべく、表面を追うだけではなく、しっかりと身につけなければなーと反省させられる部分も。

数学に詳しい人も、そうでない人にもオススメな万人向けの一冊。